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コントロールを手放す時間:おうちでできるドリッピング&スパッタリングアート

Tags: アートセラピー, 感情解放, 自己表現, 絵の具, ドリッピング, スパッタリング, おうちアート

コントロールを手放す時間:おうちでできるドリッピング&スパッタリングアート

自宅で気軽に心をケアする方法として、アートを取り入れることに興味をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。これまでにも様々なアートや音楽を使った手法をご紹介してきましたが、今回は「計画やコントロールを手放す」という点に焦点を当てた、絵の具を使ったアートセラピーをご紹介します。

ここでご紹介するのは、絵の具をキャンバスや紙に垂らしたり(ドリッピング)、飛ばしたり(スパッタリング)する技法を用いたものです。特定の形を描くのではなく、絵の具の流れや飛び散りといった「偶然性」を活かすのが特徴です。この予測不能なプロセスを通して、私たちの内面にある衝動や感情が自然と表現され、結果をコントロールしようとする意識から解放される体験が得られることが期待できます。

ドリッピング&スパッタリングアートのやり方

必要なもの

特別な画材を用意する必要はありません。ご自宅にあるものや、100円ショップなどで手軽に入手できるもので十分に始められます。

事前の準備

  1. 作品を作る場所を決めます。床や机の上など、絵の具が飛び散っても問題ない場所を選びましょう。
  2. 周囲が汚れないよう、新聞紙やビニールシートでしっかりとカバーします。壁際で行う場合は、壁もカバーすると安心です。
  3. 汚れても良い服装に着替えたり、エプロンをつけたりします。
  4. 絵の具を水で溶きます。ドロドロすぎると垂れにくく、サラサラすぎるとコントロールが難しくなります。垂らしたり飛ばしたりしやすい、適度な粘度になるように調整してください。複数の色を使う場合は、それぞれの色を別の容器に用意します。

実践ステップ

  1. 紙と向き合う: 用意した紙を床や机の上に置きます。深く呼吸を数回行い、今の自分の心の状態を感じてみましょう。どんな気持ちが湧いてきますか?
  2. 絵の具を選ぶ: 今の気持ちに合う色、あるいは直感的に惹かれる色を選びます。複数色使うのも良いでしょう。
  3. 絵の具を垂らす/飛ばす: 絵筆に溶いた絵の具を含ませ、紙の上にかざして筆を軽く振ったり、筆先から絵の具を垂らしたりします。スポイトで吸い上げた絵の具を落としたり、ストローで息を吹きかけて絵の具を広げたり、古い歯ブラシに絵の具をつけ指で弾いて飛ばしたり(スパッタリング)と、様々な方法を試してみてください。
    • ポイント: 「こうでなければならない」という決まりはありません。力の入れ具合、絵筆の高さ、絵の具の粘度を変えることで、模様は多様に変化します。結果をコントロールしようとせず、衝動や感覚に従って自由に手を動かしてみましょう。
  4. 観察する: 絵の具が紙の上で広がり、混ざり合い、予期しない模様が生まれる様子を観察します。そのプロセスで何を感じるでしょうか?
  5. 乾燥させる: 作品が完成したら、十分に乾燥させます。
  6. 感じたことを書き出す(オプション): 乾燥させた作品を眺めながら、制作中に感じたこと、完成した作品を見て感じたこと、思い浮かんだことなどをノートに書き出してみましょう。どんな色が印象的だったか、どんな動きをしたか、どんな気持ちになったかなど、自由に綴ってみてください。

なぜ効果が期待できるのか:心理学的な背景

このドリッピング&スパッタリングのような手法は、「アクションペインティング」と呼ばれることもあります。これは、完成した絵そのものよりも、絵を描く「行為」や「プロセス」そのものに重きを置く考え方です。有名な抽象表現主義の画家、ジャクソン・ポロックもこの手法を用いました。

心理的な観点から見ると、この手法はいくつかの点で効果が期待できます。

実践する上でのコツとバリエーション

終わりに

計画通りにいかないこと、予測できないことの中にこそ、新たな発見や解放があるのかもしれません。絵の具のドリッピングやスパッタリングは、まさにその「偶然性」を受け入れ、自分の中のコントロールを手放す練習となるアートセラピーです。

難しく考える必要はありません。絵の具と紙があれば、すぐにでも始めることができます。もし心の中にモヤモヤするものがあったり、少し力を抜いてリラックスしたいと感じたりしたら、ぜひ一度、絵の具を自由に垂らし、飛ばしてみてはいかがでしょうか。そのプロセスを通して、きっと新しい自分の一面や、心が軽くなる体験に出会えることと思います。