手形と色で「今の自分」を表現:おうちで簡単アートセラピー
手形と色で「今の自分」を表現するおうちアートセラピーとは
私たちは日々の生活の中で、さまざまな感情や思考を抱えています。しかし、それを言葉にするのは時に難しく感じることもあるでしょう。アートセラピーは、言葉ではない「表現」を通して、自分の内面を探り、心の状態を整えるための一つの方法です。
今回ご紹介するのは、ご自身の「手」をモチーフにしたアートセラピーです。手は、私たちの身体の一部でありながら、外界と触れ合い、物を作り出す大切なツールです。この身近な手形や手の輪郭を使うことで、身体感覚と繋がりながら、言葉にならない「今の自分」を色や形で表現していきます。特別な道具や技術は一切必要ありません。おうちにある簡単な画材で気軽に始められますので、ぜひ試してみてください。
なぜ「手」と「色」を使うアートが心理ケアに繋がるのか
心理学の観点から見ると、手は単なる身体の部位以上の意味を持つことがあります。手は自己の境界線を示唆したり、私たちの創造性や行動、外界との関わりを象徴したりすることがあります。自分の手形や手の輪郭を描くプロセスは、自分自身の身体、ひいては「今の自分」という存在に意識を向けることにつながります。これは「グラウンディング」と呼ばれる、今ここに意識を集中させる効果も期待できます。
また、色や形、線といった非言語的な要素は、普段言葉にしづらい無意識の感情や思考を表現するのに適しています。手という「自分自身」の形の中に、今の感情やエネルギーを色や形で自由に表現することで、内面の状態を視覚的に捉え、理解を深めるきっかけとなるでしょう。
準備するもの
- 紙(スケッチブックやコピー用紙など、どんな紙でも構いません)
- 描画材(色鉛筆、クレヨン、パステル、絵の具など、色が出るものなら何でも)
- ペンまたは鉛筆(手の輪郭を描く場合)
- 絵の具を使う場合は、手形用の絵の具またはインクパッド、筆、パレット(お皿などで代用可)、水、ぞうきん
手形と色で「今の自分」を表現するステップ
さあ、実際に始めてみましょう。難しく考える必要はありません。感じるままに手を動かしてみてください。
- 落ち着ける環境を作る: 静かで邪魔の入らない時間と場所を選びましょう。机の上などを片付け、リラックスできる状態にします。
- 「今の自分」に意識を向ける: 座って目を軽く閉じ、数回深呼吸をします。今の自分の心や体の状態、頭の中に浮かんでいることなどを、良い悪いの判断をせず、ただ観察します。「今、どんな気持ちがするかな?」「どんな感じがするかな?」と問いかけてみましょう。
- 手形をとる、または手の輪郭を描く:
- 手形の場合: 手に絵の具をつけ、紙の上にギュッと押し付けて手形をとります。片手でも両手でも構いません。手に絵の具を塗る感触も意識してみましょう。
- 手の輪郭の場合: 紙の上に手を置き、ペンや鉛筆で手の輪郭をゆっくりとなぞって描きます。利き手で利き手でない方の手をなぞるのが一般的ですが、どちらの手を使っても構いません。
- どちらの方法を選ぶかは、その時の気分で決めてください。
- 手形や輪郭の中に色と形を表現する: 手形または手の輪郭の内側や外側に、今の心や体の状態を色や形、線で自由に表現します。
- 「今の気持ちは何色かな?」と感じる色を塗ってみる。
- モヤモヤ、ザワザワ、キラキラ、といった感覚を線や形で表現してみる。
- 特定の感情(喜び、不安、怒りなど)をイメージして色や形を選ぶ。
- 何も考えず、ただ直感で好きな色を塗ったり、線を引いたりしても構いません。
- 手形や輪郭から色がはみ出しても、紙の余白を使っても大丈夫です。自由に表現しましょう。
- できたアートを眺める(任意): 描き終わったら、少し離れて作品全体を眺めてみましょう。
- どんな印象を受けますか?
- どんな色や形が目に留まりますか?
- 描いている時には気づかなかった発見はありますか?
- もし言葉にしたくなったら、感じたことや気づいたことを紙の余白に書き加えても良いでしょう。
- 片付けと振り返り: 使った道具を片付けます。このアートを通じて感じたこと、考えたことを心の中で軽く振り返り、このアートの時間は終了です。
実践する上でのコツと期待できる効果
- 「上手く描くこと」は目的ではない: 完成度を気にせず、プロセスそのものを楽しむことが大切です。感じるままに、自由に手を動かしましょう。
- 使用する画材を変えてみる: 色鉛筆、クレヨン、絵の具など、画材によって手の感触や表現が変わります。色々な画材を試してみるのも良いでしょう。
- 定期的に行ってみる: 同じように手形アートを行っても、その時々の心の状態によって表現は変わるでしょう。定期的に行うことで、自分の心の変化に気づくことができる可能性があります。
- 期待できる効果:
- 感情の解放と気づき: 言葉にならない感情を表現することで、心が軽くなったり、自分がどんな気持ちでいるのかに気づいたりすることが期待できます。
- 自己理解の深化: 手という身体の一部を通して自己表現することで、普段意識しない内面の側面が見えてくる可能性があります。
- リラクゼーション効果: 無心で色を塗ったり、線を引いたりする作業は、心を落ち着け、リラックス効果をもたらすことが考えられます。
- グラウンディング: 自分の手に意識を集中させることで、「今ここ」に繋がる感覚を得られる可能性があります。
まとめ
ご自身の「手」を使ったアートは、特別な準備なく、誰でも気軽に始められるおうちアートセラピーの一つです。手形や手の輪郭という身近なモチーフを使うことで、身体感覚と繋がりながら、言葉にならない「今の自分」を色や形で表現し、内面を探求する手助けとなるでしょう。
もしあなたが今、言葉にならない気持ちを抱えていたり、自分自身についてもう少し深く知りたいと感じていたりするなら、ぜひ一度この手形と色のアートを試してみてください。きっと、新たな気づきや心の安らぎが得られるはずです。あなたの心が少しでも軽くなることを願っています。