モヤモヤした気持ちを「描き出す」:おうちでできる感情浄化アートセラピー
私たちは日々、様々な感情を抱えて過ごしています。中には、怒りや悲しみほどはっきりしないけれど、心の中にずっと残り続ける「モヤモヤした気持ち」や「漠然とした不安」もあるのではないでしょうか。こういった感情は、言葉にするのが難しく、どう扱って良いか分からないことも少なくありません。
そんな時、絵や線を使って心の中を「描き出す」というアプローチが、気持ちの整理や浄化に繋がることがあります。特別な画材や技術は一切不要です。自宅で、身近なものを使って気軽に始められる、感情浄化のためのドローイングセラピーをご紹介します。
なぜ「描き出す」ことが心のケアになるのか
心理学の世界では、言葉にならない感情や考えを非言語的な方法、特にアートを通して表現することが、自己理解や心の調整に役立つと考えられています。アートセラピーもその一つです。
心の中にあるモヤモヤは、形のないエネルギーのようなものです。これを紙の上に「色」や「線」「形」として描き出すことで、心の中に溜まっていたエネルギーを外に出し、客観的に見ることができるようになります。これは心理学でいう「外在化」や「カタルシス」といった効果と関連付けられることがあります。
また、描くという行為そのものが、思考を一時停止させ、指先を動かすことに集中を促します。これにより、頭の中のぐるぐるした思考から解放され、リラックス効果やマインドフルネスのような状態に繋がる可能性も期待できます。
用意するもの:本当に身近なもので大丈夫です
この「描き出す」アートセラピーを始めるのに、特別な道具は必要ありません。以下のものがあれば十分です。
- 紙: コピー用紙、ノートの切れ端、チラシの裏など、どんな紙でも構いません。
- 描くもの: 鉛筆、ボールペン、色鉛筆、クレヨン、マーカー、絵の具など、手元にあるもので好きなものを選んでください。色が使えるものがおすすめです。
これだけです。思い立った時にすぐに始められる手軽さが魅力です。
実践ステップ:感じるままに紙に向き合ってみましょう
さあ、実際にモヤモヤした気持ちを「描き出す」ステップを見ていきましょう。
- 静かな場所を確保する: 誰にも邪魔されず、一人で静かに過ごせる場所を選びましょう。数分でも良いので、落ち着ける時間を作ります。
- 道具を準備する: 用意した紙と描くものを手元に置きます。
- 今のモヤモヤに意識を向ける: 目を閉じるか、ぼんやりと一点を見つめながら、今自分が感じているモヤモヤ、ざわつき、不快感など、言葉にならない気持ちに意識を向けてみます。体のどこでその感覚を感じるか、どんな「感じ」がするか(重い、軽い、チクチクするなど)を観察してみましょう。
- 感じるままに紙に描く: 「上手く描こう」「何か意味のあるものを描こう」という考えは一切手放してください。 ステップ3で感じた「モヤモヤ」を、そのまま紙の上に表現してみましょう。
- どんな色?
- どんな形?
- どんな線?(太い、細い、ぐにゃぐにゃ、まっすぐ、点々…)
- 筆圧は?(強く、弱く…)
- 紙のどこに描きたい? 感じるままに、手が動くままに、紙を塗りつぶしても良いし、ひたすら線を引いても良いし、意味不明な形を描いても構いません。ただただ、そのモヤモヤを紙に移すようなイメージです。
- 描いた絵を眺める: 描き終わったら、少し離れて自分が描いたものを眺めてみます。「これは何だろう?」と分析しようとする必要はありません。ただ、ぼんやりと眺め、どんな感じがするかを感じてみましょう。意外な色や形に気づくかもしれません。
- もしあれば、言葉を添える: もし、描いた絵を見て何か言葉や感情が浮かんできたら、絵の近くに書き留めても良いでしょう。「なんだかスッキリしない感じ」「この黒い塊が重い」など、短い言葉でも構いません。言葉にすることで、少し客観的に捉えられることがあります。
- 絵をどうするか決める: 描いた絵は、大切にとっておいても良いし、その時の気持ちを封じ込めるように破いたり、燃やしたり(安全に十分配慮して)、処分しても構いません。自分が一番スッキリする方法を選んでください。描くことで満足し、もう見たくないと感じる場合は、手放すことも一つの浄化になります。
実践する上でのコツと注意点
- 評価しないこと: 描いたものに「良い」「悪い」の判断はしないようにしましょう。これは作品作りではなく、自分の心と向き合うプロセスです。
- 完璧を目指さないこと: 数分でも構いません。毎日でなくても、気が向いた時に試してみましょう。
- 安全な環境で行うこと: 誰にも見られない、安心して取り組める環境を選びましょう。
期待できる心理的効果
この方法を試すことで、以下のような効果が期待できる可能性があります。
- 感情の客観視: 漠然とした感情を「形」として外に出すことで、少し距離を置いて見つめ直すことができるかもしれません。
- カタルシス(浄化)効果: 心の中に溜まっていた感情エネルギーを放出することで、スッキリとした感覚を得られることがあります。
- 自己理解の深化: 繰り返し行うことで、自分がどんな時に、どんな種類のモヤモヤを感じやすいのか、その感情が自分にとってどんな意味を持つのかに気づくきっかけになるかもしれません。
- 気分転換: 描く行為自体が、日常の思考パターンから離れ、気分転換に繋がります。
- ストレス軽減: 非言語的な自己表現は、言葉で表現するストレスから解放されるため、リラックス効果やストレス軽減に役立つ可能性があります。
バリエーションを楽しむ
慣れてきたら、使う画材を変えてみたり、好きな音楽を聴きながら描いてみたり、描く時間を決めてみたりと、色々な方法を試してみてください。その時の気分で自由にスタイルを変えてみるのも良いでしょう。
終わりに
モヤモヤした気持ちは、誰にでも起こりうる自然な心の動きです。それを無理に言葉で説明しようとしたり、押さえ込もうとしたりするのではなく、「描き出す」という別の方法で心と向き合ってみるのも良いかもしれません。
ペンと紙さえあれば、いつでも、どこでも始められます。まずは一度、あなたの心の中のモヤモヤを、自由に紙の上に解き放ってみてください。きっと、何か新しい発見や、心の軽やかさを感じられるはずです。
自宅でできる簡単アートセラピーとして、ぜひ、この「描き出す」方法を試してみてください。あなたの心が少しでも穏やかになることを願っています。