今の気持ちを「色と形」で描いてみよう:自己理解を深めるおうちアートセラピー
今の気持ち、言葉にできない時どうしますか?
私たちは日々、様々な感情を抱えて生きています。嬉しい、楽しいといったポジティブな感情だけでなく、不安、イライラ、疲労感など、ネガティブに感じられる感情もたくさんありますね。
これらの感情を言葉にして誰かに話したり、自分の心の中で整理したりできれば良いのですが、時には「なんだかモヤモヤする」「言葉にうまくできない」と感じることもあるのではないでしょうか。特に、漠然とした不安や疲れは、その原因や正体を掴みにくいものです。
そんな時、言葉以外の方法で自分の心にアプローチしてみるのが、アートセラピーの考え方です。今回は、絵を描くというシンプルな方法を使って、「今の気持ち」を探求し、自己理解を深めるためのおうちでできるアートセラピーをご紹介します。絵心がない方でも、特別な道具がなくても大丈夫です。
なぜ「色と形」で気持ちがわかるの?アートセラピーの基本的な考え方
私たちが言葉で表現する以前に、感情は感覚やイメージとして心の中に存在しています。アートセラピーでは、この「言葉にならない感情」を、絵や粘土、音楽などの形にして表現することを促します。
絵を描くとき、私たちは意識的にも無意識的にも、色や形を選んでいます。例えば、明るい色を使うのか、暗い色を使うのか。角ばった形を描くのか、丸い形を描くのか。これらの選択には、その時の心の状態が反映されていると考えられています。
- 色: 色にはそれぞれ固有のイメージや心理的な効果があることが知られています。例えば、赤は情熱や怒り、エネルギーを、青は落ち着きや悲しみ、冷静さを連想させることがあります。描く際に選んだ色は、その時の感情の質やエネルギーレベルと関連している可能性があります。
- 形・線: 形や線にも、心理的な側面が反映されることがあります。例えば、鋭角な線や崩れた形は緊張や混乱、安定しない気持ちを示すかもしれませんし、滑らかな曲線やまとまった形は穏やかさや安心感を表すかもしれません。
絵を描くプロセスそのものも重要です。無心で手を動かすことは、思考から離れてリラックスする時間をもたらし、感情の解放を促すことがあります。完成した絵を後から眺めることで、客観的に自分の心の状態に気づくきっかけになることもあります。
このように、「色と形」を使ったアート表現は、言葉にならない感情や無意識の領域にある思いを映し出す鏡のような役割を果たすと考えられています。
【実践】「今の気持ち」を色と形で描いてみよう
では、実際にやってみましょう。とても簡単で、特別な準備は必要ありません。
用意するもの
- 紙(ノートの端や広告の裏でも大丈夫です)
- 描くもの(色鉛筆、クレヨン、クーピー、マーカー、ボールペンなど、色が出せるものがあればベストですが、鉛筆や黒ペンだけでも可能です)
やり方(ステップ)
- 静かな場所を見つける: 短時間で良いので、誰にも邪魔されず、リラックスできる場所を選びましょう。机の上でも、床の上でも構いません。
- 軽くリラックスする: 肩の力を抜いて、数回深呼吸をしてみましょう。目を閉じても良いですし、開けたままでも構いません。
- 「今の気持ち」に意識を向ける: 「今、どんな気分かな?」「何を感じているかな?」と、自分の心にそっと問いかけてみます。具体的な感情(例: 嬉しい、疲れた、少し不安)でも良いですし、「なんだかモヤモヤする」「落ち着かない」といった漠然とした感覚でも構いません。無理に言葉にする必要はありません。
- 感じるままに「色と形」で描く: 今感じているその気持ちに合う「色」や「形」「線」を、頭で考えすぎずに、紙の上に自由に描いてみましょう。
- どんな色を使いたいですか?
- どんな線を引きたくなりますか?(まっすぐ、ぐにゃぐにゃ、点々など)
- どんな形を描きたくなりますか?(丸、四角、とがったもの、不定形など)
- 紙全体を使っても、一部分だけでも構いません。
- 「うまく描こう」と思わなくて大丈夫です。感じたままに手を動かしましょう。
- 描き終わったら、絵を眺めてみる: 描き終えたら、少し離れて、描いた絵を眺めてみましょう。
- どんな印象を受けますか?
- どんな色が多いですか?どんな形が多いですか?
- 絵を見ていると、どんな気持ちになりますか?描く前と比べて、気持ちに変化はありますか?
コツと注意点
- 「上手い・下手」を気にしない: これは作品作りではありません。自分の心を探るための個人的なプロセスです。誰かに見せるものでもないので、自由に、気の向くままに描いてください。
- 短時間でもOK: 長く時間をかけなくても大丈夫です。5分や10分でも、今の気持ちを表現してみるだけで十分です。
- 描いている時の「感覚」も大切に: 手を動かしている時の感触や、どんな気持ちで描いているか(楽しい、集中している、少し苦しいなど)も、絵と同じくらい大切な情報です。
- 絵の「解釈」に囚われすぎない: 描いた絵を見て、「これはこういう意味に違いない」と決めつけすぎる必要はありません。あくまで「今の自分はこんな感じなのかな?」というヒントとして捉えましょう。日によって、同じ色や形でも感じ方が違うこともあります。
- 感情が溢れそうになったら: もし描いている最中に感情が強く動いたり、辛い気持ちになったりした場合は、無理に続けず、描くのをやめて深呼吸するなど、自分を労わってください。必要であれば、信頼できる人に話を聞いてもらったり、専門家に相談したりすることも考えてみましょう。
期待できる心理的効果
この「色と形」を使ったアートセラピーを通して、以下のような効果が期待できます。
- 感情の客観視と気づき: 言葉にできなかった漠然とした気持ちが、色や形として「見える化」されることで、自分の心の状態に気づきやすくなります。客観的に自分の感情を捉える一歩となる可能性があります。
- ストレス軽減とリラックス: 何かに集中して手を動かすことは、頭の中の思考を一時的にストップさせ、リラックス効果をもたらすことがあります。感情を表現する行為自体が、カタルシス(感情の浄化)に繋がり、ストレスを軽減する可能性があります。
- 自己理解の促進: なぜその色を選んだのか、なぜその形になったのか、描いている時に何を感じたのかなどを振り返ることで、自分自身の内面や無意識の側面に気づき、自己理解を深めるきっかけとなる可能性があります。
- 創造的な自己表現: 「うまく描く」という制約から離れて自由に表現することは、自分らしさを認め、創造性を刺激することに繋がります。
もっと深く探求したい場合
この簡単な方法を続けることで、自分の心のパターンの変化に気づくかもしれません。もしアートセラピーにさらに興味を持たれたら、関連する書籍を読んだり、大学の授業で専門的な知識を深めたりするのも良いでしょう。また、資格を持ったアートセラピストのセッションを受けてみることも、より深い自己探求や課題への取り組みに繋がる可能性があります。
まとめ:まずはペンと紙を持って
「今の気持ちを色と形で描いてみる」というアートセラピーの方法をご紹介しました。
これは、特別なスキルや道具がなくても、自宅でいつでも気軽に始められる心理ケアの一つです。言葉にならない感情や漠然とした心の状態に優しく寄り添い、自分自身の内面を静かに見つめる時間を与えてくれます。
完璧を目指す必要はありません。ただ、今のあなたが感じているものを、自由に紙の上に表現してみてください。その一枚の絵が、あなた自身の心を理解するための、新しい扉を開く鍵となるかもしれません。
もし、この記事を読んで少しでも興味を持たれたら、まずはペンと紙を持って、あなたの「今の気持ち」に耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。